保護者の皆様へ

僕が子どものころの40年くらい前までは、絵本などに必ずと言って良いくらいに「保護者の皆様へ」といった文章が載っていました。その内容は「この絵本は、これこれといった学習効果や情操教育に配慮して編集しています。保護者の皆様は安心して子どもに買い与えてください」というようなものでした。今でこそ児童書出版社は皆「絵本は楽しむものです」と言っていますが、ある時期までは、絵本を学習や教育の道具として売ろうとしていたのも事実です。その刷り込みもあってか、いまだに絵本を文字量だけで判断する保護者の方が多いのには悲しくなります。ましてや本の感想を聞く、読書感想文を書かせる、と言った行為は、必ず子どもを本嫌いにします。保護者の皆様には、絵を読む、その絵本の世界に浸る、想像する、といった体験を子どもと一緒にしていただければと思います。

まるは、絵本を語る。

皆さんは、絵本と聞いて何を想像されますか?『おさるのジョージ』?『ぐりとぐら』?『はらぺこあおむし』?実はいまだに書店店頭の回転塔にある『ももたろう』とか『はたらくじどうしゃ』といったボードブックをイメージする人も多いようです。毎年沢山の絵本が誕生していますが、逆に量が多すぎるせいもあるのか、新しく出版されている魅力的な絵本に、出合う機会を逸している人があまりに多いように思います。
大学で絵本をテーマに講義をしておられる教授が「文学系の学会に参加したときに、絵本を研究していますと言うと明らかに一段低く見られることが多い」と言っておられました。実は日本に限らず世界的に見ても絵本を一段低く見る傾向はあるようです。子供だましという言葉がありますが、まさしく絵本は子供だましのひとつのようにとらえる人はまだまだ多いと思います。
実は僕は、絵本こそ総合芸術だと思っています。しっかりとした構成、魅せられる絵、心惹かれる文章がマッチしなければ、ロングセラーの絵本にはなり得ません。ですから、「絵本作家にならなれるかも」などという軽い気持ちで目指している方に出会うととてもがっかりしてしまいます。
まるはは「日本は世界一の絵本大国」だと思っています。まず12~13世紀に描かれたと言われている鳥獣戯画ですが、これには文字はありませんが僕は世界で最古の絵本だと思います。そして14世紀ごろうまれた御伽草子(奈良絵本)、これこそは絵本のルーツだと言えるでしょう。ヨーロッパの方たちに御伽草子を見せ、これが14世紀に作られたものだと説明すると、皆一様に感嘆の声を発するそうです。
今アジアの国々の絵本作家や絵本の出版社は、精力的に日本の絵本から学ぼうとしています。また欧米の絵本作家たちはあまり口にはしませんが、日本で翻訳出版されることを一つのステイタスと考えているようです。それは、日本の印刷技術が優れているから、もう一つは日本人の選択眼を信頼しており日本人の評価に耐えうる絵本を出せたという喜びがあるからだそうです。
1990年ごろまで日本では、海外の絵本作家の方が優れているという風潮がありましたが、現在は質といい量といい、今や「日本は世界一の絵本の出版国」だと言えるのではないでしょうか?