絵本とは
絵本の定義は?と聞かれると意外と難しいものです。偉大なる絵本作家の長新太さんは、子どもの本には童話と絵童話と絵本の3種類がある、と言っていました。童話とは比較的長いお話にさし絵が入っているもの、絵童話とは紙面において絵の占める割合が多く、絵と文章が見開きごとにまとまっていて36ページ位までのもの、だと思います。では絵童話と絵本の違いとは何でしょうか?本当の絵本とは、絵で表現していることは文章で書かない、文章で書いていることは絵で描かない、無駄を省いた絵と文がお互いを支えあい高めあって表現されたもの、を指すのだと思います。そう思って絵本を見渡してみると、本当の絵本はまだまだ少ないように思います。ちょっと偉そうに聞こえるかと思いますが、僕が読み聞かせの絵本選びをしている時、とてもそれを感じるのです。
翻訳絵本の文章は総じて長めです。さし絵の童話からの流れを色濃く感じます。ですから翻訳絵本をお手本のように考えていると、本当の絵本の魅力にはなかなか辿り着けないように思います。日本には、鳥獣戯画から奈良絵本そして漫画やアニメにいたるまで、優れた「絵を読む文化」があります。日本は世界最古の絵本の国であり、いまや世界で一番の絵本先進国だと思っています。その世界最先端の絵本を存分に堪能したいものです。

まるはの主張 「僕が本当に気に入った絵本を紹介する活動をしたい!」
僕が書店の児童書売場で働いていた頃、強く感じたことの一つに「たくさんの出版社が様々な絵本を出版しているのに、なぜある出版社ばかりに人気が集中するのだろう」という疑問がありました。絵本を紹介したブックリストを見ても、出版社に偏りを感じることが少なくありません。そんなこともあり、JPIC読書アドバイザー養成講座を受講し始めた頃から「僕が本当に気に入った絵本を紹介する活動がしたい!」と思うようになりました。それはまさしく、デパートの台所用品売場で包丁の実演販売をしているのと同じイメージでした。ですから僕の活動は書店や商業施設での読み聞かせが中心です。たまたまそこに居合わせた子どもたちが、どれだけ僕の読み聞かせに反応し、その絵本を面白がってくれるか、が見たいのです。目の前の子どもたちと毎回が“勝負!!"なのです。
なぜ絵本の読み聞かせをしているの?

子ども達と楽しい時間を共有するだけなら読み聞かせ以外にも方法はあります。
でも僕は絵本の読み聞かせにこだわっています。それは、絵本が子ども達の想像力を豊かにするためにとても重要なツールだと思うからです。
人間にとって想像力は不可欠です。相手にダメージを与えない接触のし方、相手の心を傷つけない言動、他人を思いやる心、周囲の者達が気持ちよくすごせる気配り、その時になって慌てなくてすむ準備、将来に役立つ備え、人の役に立つ行動、仮説をたてなければ始まらない科学する心、事故を未然に防ぐ行為、事件を素早く察知する観察力、などなど全ては想像することができるからこそ行動に移せるのです。
そんなことをしたら後で大変なことになると「ちょっと考えればわかるような」事件を起こしてしまうような若者がいますが、もしかすると想像力を養う訓練をさせてもらえなかったのでは、と思ったりします。想像力を一番喚起できるのは、実際に見たり体験したりすることだと思います。しかし子どもがのびのび遊べる場所が少なく、老人の話を聞く機会も少ない現代社会では、新しい体験や心躍らせる話に接する機会が少なすぎます。それどころか、遊ぶ時間を削って塾に通わされたり、せっかく子どもが興味を持つ事柄があってもそれが学業に直結しないと親が否定し取り上げてしまうような現代では、子ども達の想像力を養う場がどんどん奪われてきていると思うのです。
想像力が独創性を刺激し、行動力を推進するのです。現代の若者には「独創性が無い」「行動力が無い」などと嘆いている大人がいますが、「ほかの子と同じようにふるまうこと」「よそ見をせずに与えられた課題に取り組むこと」「目立つ行為を行うと不利になること」ばかりを教え込んできていて今さら何を言うか、と思わずにいられません。
そこで重要なのが絵本です。絵本は赤ちゃんから幼児・小学生大人にいたるまで、幅広い読者層が対象になります。絵本に魅せられた子どもが本好きになって、未知の世界を思い描いたり、先人の知恵や体験に触れたり、ありえないストーリーに刺激を受けたりすれば、その子はとても想像力の豊かな人間になっているのではないでしょうか?
僕は、子ども達の想像力の翼をはためかすお手伝いを少しでも出来たら、と考えています。